ドラゴンクエスト ダイの大冒険の外伝的なスピンオフ作品である、 勇者アバンと獄炎の魔王の第32話『力と頭脳と魂と』ネタバレ、感想記事です。
今回の内容は、Vジャンプ2023年8月号でご覧になれます。
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※ネタバレを含みますので、まだ読んでいない方は注意。
・マトリフの武器
マトリフの武器は"頭脳"だという事は、ガンガディアからすれば百も承知の事実です。
今さら何を言っているのかと、だから彼は己のポリシーを捨ててまで"ドラゴン"に変身したのです。
ガンガディアの猛攻に対して、"アバンの盾"で身を守る事しか出来ないマトリフ。
魔法使いである彼は、勇者や戦士と違い片手で盾を使いこなす事が出来ません。
よって両腕が使えなくなり、それは"メドローア"にとって致命的でした。
それでもマトリフは何とか呪文で応戦しようとしますが、"小さなメラ"を放つのが精一杯です。
壁に叩きつけられても、なお立ち上がるマトリフに対し、それはもはや"頭脳"ではなく"闘魂"ではないかと言うガンガディア。
当のマトリフも、そういう根性論は誰よりも嫌いだが、無茶な仲間たちにすっかり毒されてしまったと認めています。
ここで、マトリフの身を守ってくれていた"アバンの盾"が真っ二つに割れてしまいます。
身を守る術が無くなってしまったマトリフは、とても"小さなヒャド"を作りガンガディアに向けました。
そんなちっぽけな"ヒャド"では、ドラゴンの炎を相殺する事すら出来ないと、同情すらも浮かべるガンガディア。
「次で終わる!」
ガンガディアは、大きく息を吸い込み最後の一撃を吐き出そうとしています。
すると・・・!?
「ああ・・・終わるな」
そう言って、この状況で何故か余裕の表情のマトリフ。
マトリフの作った小さな"ヒャド"。実はこのちっぽけなサイズなのは、理由があったのです。
ガンガディアが自分の足元を見ると、そこには先ほどマトリフが放った小さな炎が・・・
そうです。マトリフは、ガンガディアが気付かない間に、小さな"メドローア"を作る罠を仕掛けていたのでした。
・決着
いくら小さいとはいえ、"メドローア"の威力は強力です。
ガンガディアの尻尾の一部分を、えぐり取る様に消滅させてしまいました。
先に仕掛けておいた小さな炎にピッタリ合わせる様に、目視だけでそんな計算が出来た事に驚愕するガンガディアでしたが、実はマトリフの真の狙いは別にありました。
頭の良いガンガディアであるからこそ、先ほどの小爆発に動揺すると読んでいたマトリフ。
彼は、その一瞬の隙を狙っていたのです。
ガンガディアが気付いた時には、マトリフは既に"メドローア"を作り放つ寸前でした。
マトリフが放った"メドローア"は、ガンガディアの喉元をかすめ取っていきました。
直撃させられず外したかと思われましたが、喉元を狙ったのもマトリフの計算通りです。
何故なら、そこには火竜がブレスを吐くための"火炎器官"があるからです。
そして、それが引火し大爆発を起こしました。
爆発によって、左腕から両足にかけてを失ったガンガディア。
瀕死の状態の彼は、マトリフに見事だと正直に称えます。
「自分の頭脳を信じて耐え抜いた、あなたの知恵と魂の勝利だ」
そう言うとガンガディアは、"ドラゴラムの書"を私と共に燃えてしまうには惜しい本だと、マトリフに差し出しました。
しかし、マトリフの体力では"ドラゴラム"に耐えられません。
そこでガンガディアは、勇者にでもあげたまえと提案します。この時に受け継がれた書が、原作でのアバンの"ドラゴラム"に繋がるのです。
また、ガンガディアは、魔導図書館を破壊してしまった事を心残りに思っていると言いました。
知性を一番大切にしている彼が、後世に受け継がれるべき知の泉を破壊してしまったのですから、恐らくずっと気にしていたのでしょう。
ガンガディアが最期に素直な気持ちを打ち明けた事に対し、マトリフも本音を話します。
自身の事を"超天才"と自負する彼は、若い頃から師匠以外の誰にも負けた事がなく、張り合う相手がいなかったと言います。
もっとも、"カノン"は強かったのですが、惚れた女であったため争う事はありませんでした。
だから、殺し合いをしておいて何ですが、彼は今、不思議と嬉しい気分なのです。
「おまえさんは初めて出会った、オレの血を沸かせてくれる素晴らしいライバルだったぜ・・・ガンガディア・・・!」
その言葉を聞きハッと目を見開いたガンガディアは、「あなたに評価されると・・・最高に嬉しい・・・」と言い残し息を引き取りました。
ここに、お互いをライバルと認める二人の戦いに幕が下りました。
ガンガディアに勝ったマトリフでしたが、力を使い果たしたのか、その場に倒れてしまいます。
彼がアバンに"ドラゴラムの書"を渡すのは、当分先になりそうです・・・
・新たな恐怖
一方、先を進むアバンたちは、いよいよ魔城の最深部に入ろうとしていました。
今までとは違い、明らかにこの先には行かせまいと、魔物たちが通せんぼをしています。
迷路をグルグル回らされるより、分かり易くて断然いいとロカが先陣を切って突っ込んでいきました。
真っ向からの全面衝突か!?・・・と思われましたが、何故が魔物たちの動きが止まります。
そして、魔物たちは何かに怯えるように、カタカタと震えています。
通路の向こうの方から、凄まじい邪気を感じ取ったアバン。
まさか、魔王が自ら出向いてきたのか!?
しかし、ロカの持つ"不死鳥のかがり火"は、先ほどまで一つの方向を差し続けていたのに、急に乱れ始めました。
つまり、魔王以外の強敵が突然現れたという事です。
「・・・未知の・・・新たなる敵・・・!」
アバンがそう言うと、通路の方から声がします。
「・・・"未知の"?・・・ひどい言われようだな・・・心から凹むよ」
その聞き覚えのある声に、アバンは背筋が凍る程の恐怖を感じました。
通路から現れたのは、生きているのも不思議なくらいボロボロになった姿の"キギロ"でした。
「・・・やはり・・・生きていたか・・・!」
彼のしぶとい性格を知るアバンは、生きていた事をある程度は予測していたようです。
しかし、この"やはり"という言葉に、キギロが異様に反応します。
「・・・言い方ァ!!」
声を荒げたキギロ。生きていたのが当然みたいな言い方が、癇に障ったようです。
アバンの"空裂斬"くらって、ほぼ死にかけたと言うキギロ。
普通なら貫かれない筈の生命の根源を傷付けられた彼は、もう再生のための種子も残せないと言います。
しかし、彼は生きていました。
死の寸前に、キギロの中に何か力が宿ったのです。
そして、ただ生き残っただけでなく、今の彼は身体は枯れてしまたものの、過去最高の強さを手にいれました。
「・・・呪いだ!」
アバンは、キギロに宿った力が呪いだという事に気付きました。
アバンたちに対する恨みが"呪い"の力となって、キギロの魔力を進化させたのです。
魔物たちが怯えていたのは、呪いが生み出した異様な邪気だったのでした。
もう、手柄などはどうでもいいと言うキギロ。
こんな身体になって出世した所で、何も楽しい事はありません。
彼の望みは、一つ・・・アバンたちを殺す事です。
もはや"空裂斬"をもってしても、今のキギロを倒せるのか分からない。
珍しくアバンが困惑した表情を浮かべています。
邪悪なオーラに強力な呪いの力まで加わってしまったとしたら・・・
レイラは、こんな厄介な相手とアバンを戦わせる訳にはいかないと、身構えます。
マトリフがガンガディアを一人で相手したように、今度はレイラがキギロを相手するつもりです。
しかし、レイラが身構えると同時に、ロカの手から何かが飛んできました。
「頼んだ」
それは、"不死鳥のかがり火"でした。
どうやらロカも、キギロを一人で相手するつもりのようです。
・感想、まとめ
ついに、マトリフとガンガディアの戦いが決着しました。
小さな"メドローア"の罠を仕掛けて成功させた事もそうですが、それに頭の良いガンガディアが驚き隙が出来る事も読んでいたとは、やはり彼の"頭脳"は究極の武器でしたね。
戦いが終わった後に、お互いが認め合って幕を引きました。
この時の"ドラゴラムの書"が、マトリフからアバンに受け継がれたのですね。
そして、何とキギロが生きていました。しかも、"呪い"の力でパワーアップした状態です。
ゲームでは勇者たちに不利に働く"呪い"なので、いくら魔物とはいえ有利にだけ働くとは限らないと思います。
もしかしたら、"呪い"によるパワーアップは、何か代償になる物があるのかも知れませんね。
ガンガディアの相手をマトリフが引き受けたように、今度はロカがキギロの相手をしそうです。
原作では既に故人となっているロカですが、もしかしたらこのキギロとの戦いで命を落とすのかも知れません。
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